全日本積穂俳画協会pelleq

作品紹介

“無心に大胆に思うままに自由に描く”軽やかな筆致から生まれる積穂俳画は、自然の姿や人々の暮らしなど森羅万象を色彩やかに情緒豊かに表現することを大切にしています。美しい花を描く時は、花の透明感や生命感、香しさが漂うかのように、一筆一筆に想いを込めて描きます。ここでは全日本積穂俳画協会の創立者 薮本積穂と理事長 本田翔穂の四季の俳画を紹介いたします。様々な筆使いや色の濃淡・かすれによる表現、絵に添えられた俳句との調和に俳画特有の趣向があります。

薮本積穂 Sekiho Yabumoto

1907年和歌山県生まれ。1928年旧制東京大倉高商(現東京経済大学)卒業。学生時代より祖父の業である古美術を愛し、鑑賞•研究のかたわら、南画を水越松南に、俳画を赤松柳史に学ぶ。1964年師の賛助のもと俳画 積柳会を創立、主宰する。1991年全日本積穂俳画協会を創立する。著書に「俳画•描き方と手本」(日本放送出版協会)、「俳画•四季の花を描く」(同)、「俳画歳時記」(秀作社出版)など多数。内閣総理大臣賞、文部大臣賞等受賞。1987年勲四等瑞宝章受賞、1992年文化庁長官表彰受賞。

  • 「熊笹」
    神苑は茜を濃くし初からす積穂句

    社の庭に植えられた熊笹は隅取り美しく、厳かな神苑に初鴉の鳴き声が響きます。
    熊笹の葉は、力強く描き、濃淡かすれを生かします。

  • 「花見団子」
    春灯に夫婦こけしのかげまろし積穂句

    お土産の花見団子を頂きます。お花見で華やいだ心にやさしい春の灯に照らされた夫婦こけしの丸い顔も
    やさしく微笑んでいるかのようです。お団子は、一筆で形を描き、柔らかそうに描きます。

  • 「梅雨」
    ふれ合ひて三年坂の梅雨の傘積穂句

    三年坂の狭い道に観光客の差す傘が連なります。あいにくの梅雨の日ですが古都の旅情は深まります。
    わずかな雨風に揺れる柳の枝葉を描きます。雨はうす墨の濃淡で一刷でさっと描きます。

  • 「光悦寺秋景」
    秋の蝶寺苑のしじま抜けきれず積穂句

    秋も深まった寺苑に訪れた静寂の中、秋の蝶の音も無く飛ぶ様は、閑寂の極みです。
    光悦垣は墨色で描き、絵の趣きも引き立てています。

  • 「雪の日」
    凍て立てる行者の像のきびしかり積穂句

    冬の修業は厳しく、悟りへの求道は続きます。寒そうな小坊主さんと雪だるまの組合せは、俳味のある画題です。
    雪だるまは片ぼかしで描き、小坊主さんの袴の墨色の濃さが雪の白さを際立たせます。

本田翔穂 Syouho Honda

1965年宮城県生まれ。1987年日本大学卒業。俳画を祖父 薮本積穂に師事。諷詠同人。現在、全日本積穂俳画協会理事長。NHK文化センター、近鉄文化サロンなどで俳画講師を務める。著書(監修)に「大胆に、自由に、のびのびと俳画を楽しむ」(淡交社)、「俳画が上手くなる50のポイント」(メイツ出版)。

  • 「福の神」
    老楽のひとり気侭を謡初む積穂句

    ある民芸品店で見つけた郷土玩具。三春張子の「福の神」だと店員さん。扇を手に舞う姿は楽しげで、謡が聞こえてきそうです。
    特徴を残しつつ、できるだけ簡略化して描きます。

  • 「春の山」
    することのあるはあれども春炬燵翔穂句

    春の山は霞をまとい、少しずつ穏やかに色づいていきます。まだ寒さの残る春の景色を眺めながら炬燵で温もる至福の一時です。
    山の緑や水の色は淡くも、生き生きとした色調で描きます。

  • 「睡蓮」
    行間に噴水の音入れ読書翔穂句

    夏の昼休みの公園で、涼しげな噴水の水しぶきの音を聴きながら読書を楽しみます。公園の池には美しい紅色の睡蓮が咲いています。
    花の色を引き立たせるように、水面に浮ぶ葉は墨色で描きます。

  • 「秋の果物」
    木の実落つ暮れゆく翳をまとひつつ積穂句

    暮れゆく秋日をまとい、秋の果物は少しづつ熟していきます。果物の形や色合いの組み合わせに変化をつけて、秋色を楽しみます。
    果物は瑞々しくも落ち着いた色調で描きます。

  • 「大根干す」
    初冬や日和になりし京はづれ蕪村句

    曇り、晴れと不安定な気候に晒されながら干された大根は少しづつ陳ねていきます。
    棹に干された大根は渇筆気味の筆でリズミカルに描きます。